こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

妻が漫画家(「星旅少年」という漫画を連載しています)ということがあり、当事務所では漫画家さんなどのクリエイター応援プランを用意しております。

漫画家などの作家さんの方の確定申告については、いくつか注意するポイントがあります。

今日は経費について確認します。確定申告をするときの参考にしていただければ嬉しいです。

事業にかかる費用

家事按分に注意

仕事用の部屋や事務所を借りている場合、その賃料は100%経費とできます。

難しいのは自宅を事務所としていたり、自宅の光熱費やスマホ代、自家用車のガソリン代など、仕事とプライベートを明確に区別できないものです。

これらの費用は全額を経費とできず、仕事とプライベートに使用割合を按分し、仕事部分を経費とします。これを「家事按分」といいます。

ほぼ仕事用のスマホなら9割、4部屋ある自宅のうち1部屋を仕事に使っている場合の家賃ならの4分の1を「経費」として申告するというイメージです。

税務署が納得できるような合理的な理由・基準で按分し、相当の金額であれば、基本的には認められます。

機材・ソフトウェアなど

機材はパソコンと液晶タブレット、専用のペンなどを使われる方が多いと思います。

漫画を描くために必要な道具ですので、当然経費となります。ただし、計算方法に注意が必要です。

10万円未満のものであれば消耗品としてそのまま購入した金額が経費となりますが、それ以上の金額の物は青色申告しているかどうかで対応が変わってきます。

青色申告の承認を受けている場合、一式30万円未満で、年間300万円に達するまでは少額減価償却資産として一括で経費計上できます。

他に机やイス、什器等も同様です。

ソフトウエアについても、買い切りの場合は同じですが、サブスク型の場合、毎月の使用料が経費となります。

取材費・イベント関連費用

取材に係る旅費や宿泊費なども、事業に関連した物であれば経費となります。ただし、私的な旅行と混同されないように注意が必要です。

また、直売会などのイベントで書籍を販売するための印刷代、出展料、交通費・宿泊費なども経費となります。

これらのレシート・領収書などはしっかりと保管しておきましょう。

作品のための資料代

漫画家さんをはじめクリエイターの方は、ご自身の作品づくりのため参考となる漫画や書籍、写真集、映画、小説などを購入されることが多いと思います。

これら、他の業種では経費としては認められないものでも、資料として認められやすいと言えます。

ただし、何でもかんでも認められるわけではありません。

例えば、ご自身の作品が現代のスポーツを描いたものだったとします。その方が、日本の戦国時代を描いた漫画や小説を買ったとして、作品の参考にしたと言えるでしょうか。

また、クリエイターの方は色々な資料から作品のアイデア・インスピレーションを得ることがあると思いますが、あまりにもご自身の趣味で使っているようなものが経費として認められるかというと、難しいでしょう。

経費にできるか否かは、税務調査の際に調査官を納得させられるかどうかで決まります。「事業に関連した支払である」というしっかりとした理由があり、調査官が納得できれば経費とすることは可能です。

大事なのは理由です。事業に関連する支出であり、「こういう理由で経費にした」というしっかりとしたストーリーがあれば、極端な支出は別として、経費として認められる可能性は高いでしょう。

そして、ご自身の作品にこう使った、と説明できるような資料等を用意しておくといいと思います。

給与か外注費か

アシスタントさんなどに作業を手伝ってもらったときの報酬は給与となるでしょうか。外注費となるでしょうか。

「どちらでも金額は変わらないから一緒でしょ」とお思いになるかもしれません。確かに所得税を計算する上ではそうかもしれません。

しかし、消費税、源泉所得税などにかかわってきます。外注費として支払う場合、相手は個人事業主となるのです。どっちでもいいことは決してありません。

どちらに該当するか、明確な線引きはないのですが、国税庁は「消費税基本通達」というもので以下の4つの基準を例示し、総合的に判断するようにとしています。
(国税庁HP:個人事業者の納税義務(個人事業者と給与所得者の区分)

個人事業者と給与所得者の区分の例示

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。 

簡単に解説してみると
(1) 代替できるか
他の人に代えることができるかどうかです。簡単に代えられる(こちらの都合で半ば強制的に人を変更できる)なら外注費、そうでなければ給与となります。

(2) 指揮監督があるか
アシスタントさんが自由に、自分の裁量でできる場合は外注費、こちらの指揮監督を受ける仕事であれば給与となります。

(3) 報酬の請求
アクシデント等で途中で作業を中断した場合に報酬を支払うかどうか。それまでの仕事分を受領できなければ外注費、できれば給与となります。

(4) 材料や用具等
漫画家さんがアシスタントさん等の機材やソフトを用意しているかどうか。用意してなければ外注費、用意していれば給与となります。

これらはあくまで例示であることに注意が必要です。1つ当てはまったからといって必ずしも外注費になる、給与になるという訳ではなく、総合的に判断をします。

まとめ

もちろん、その方その方によりますが、漫画家さんは他の業種と比較して、あまり経費を使わないという傾向があるように思います。

例えば交際費など、外で交際してお金と時間を使うより、漫画やアニメ、小説などでアイデアなどを練ることが多いのではないでしょうか。

だからこそ、経費として計上できるものはきちんと計上し、節税につなげて欲しいと思います。