こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
フリーランス・個人事業主の方の多くはお住いの自治体の国民健康保険(国保)に加入しているかと思います。
国保の料金は大きく2つあり、前年の所得に税率を乗じた「所得割」と、世帯ごと・加入者ごとに一定の金額が発生する「世帯割・均等割」から計算されます(自治体によって呼び名は変わると思います)。
このうち「所得割」については、確定申告で「上場株式等の配当所得・譲渡所得」を申告した場合、影響が出ますので注意が必要です。
なお、国民健康保険だけでなく、後期高齢者医療保険も同様の話になります。
所得割の対象は申告した全ての所得
国保料(国保税とする自治体もありますが、「国保料」で統一します)の所得割は、(「前年の所得合計」ー「基礎控除」)×税率で計算します。
「前年の所得合計」は、確定申告で申告した所得全てを合算した金額となります。
よって、「上場株式等の配当所得・譲渡所得」について、申告不要とせず確定申告をした場合は、その金額も込みで計算されることとなります。
「還付目的で確定申告をしたら、還付額以上の国保料がかかった」ということは往々にして起こり得ます。
上場株式等の配当所得・譲渡所得は一度確定申告をしてしまうと、あとから「申告不要」にしたいといって扱いを変えることはできません。
確定申告の際は、要注意です。
所得割だけでなく保険証の負担割合にも影響
病院での窓口負担の計算
保険証には負担割合が設定されています。多くの方は3割ですが、年齢と所得によって1割、2割、3割と分かれます。
病院へ払う費用は、点数と負担割合で決まります(保険適用の診療の場合)。
点数とは、医師の行う診療によって定められており、2024年は例えば初診料なら291点、再診料なら75点となっています。
この点数×10×負担割合が、患者の払う費用となります。
その日の診療の総点数が500点で3割負担の患者さんの場合は
500×10×3割=1,500円が、病院で払う金額です。
国民健康保険の負担割合
国保の負担割合は、以下のとおりです。
- 小学校入学前の乳幼児:2割
- 小学校入学後、70歳未満:3割
- 70歳以上75歳未満:2割又は3割
※75歳以上の方の「後期高齢者医療保険」には1割負担もあります。
70歳以上の方の負担割合は所得と収入で変わる
上記のうち、70歳以上の方の負担割合(2割又は3割)が、市民税の課税標準と、申告した所得の総収入で変わってきます。
細かい説明は省略しますが、住民税の課税標準が一定を超えると3割になり、3割となった場合でも、総収入額が一定以下であれば2割となる、という仕組みになっています。
株式譲渡はあったけどマイナス(損失が出た)だったから関係ないでしょ、と油断しないでください。他の所得があって3割負担と判定され、株の譲渡収入が多額であるために2割にならなかった、ということがあり得ます。
単純計算で向こう1年間の医療費が1.5倍になる計算です。場合によっては、国保料よりも影響が大きくなります。
住民税だけ申告不要とできなくなった
令和4年分(住民税・国保は令和5年度)までは、確定申告で申告した「上場株式等の配当所得・譲渡所得」を、住民税では「申告不要」と申請することができました。
これにより、確定申告で還付を受けつつ、国保では申告不要とする、という言わば「良いとこ取り」ができていたのですが、令和5年分(住民税・国保は令和6年度)からはできなくなりました。
今年確定申告をしてご存知の方も多いかと思いますが、それを知らず来年の確定申告でこの制度を利用しようとされている方は、できなくなっていますので、ご注意ください。
まとめ
税務署で地方税への影響を聞いても答えてくれません(というより、地方税は管轄外なので市役所に聞いて、と言われます)。
また、自治体でも、市民税・国保の他、介護・保育料など影響が多岐に渡るため、税務課だけでは答えられない可能性があります。
上場株式等の配当所得・譲渡所得の申告には、注意が必要です。
【編集後記】
これから病院に行くので、保険証の負担割合についても触れてみました。