こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
「家内労働者」に認められている必要経費の特例についてのお話です。
家内労働者って何者?
厚生労働省のHPでは以下のように記されています。
厚生労働省HP「家内労働について」
家内労働者とは、通常、自宅を作業場として、メーカーや問屋などの委託者から、部品や原材料の提供を受けて、一人または同居の親族とともに、物品の製造や加工などを行い、その労働に対して工賃を受け取る人をいいます。
内職のような形をイメージしていただければ当てはまるかと思います。
この家内労働者には必要経費に関する特例があります。
家内労働者等の必要経費の特例
国税庁のHPでは家内労働者を以下のように規定しています。
国税庁HP
家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。
家内労働者の収入は事業所得又は雑所得となります。
必要経費について、1円もかかっていなかったとしても55万円まで(令和元年分以前は65万円。以下同じです。)認められることとされています。これが家内労働者の必要経費の特例です。
計算の概要
事業所得または雑所得のどちらか一方の場合
実際にかかった経費の額が55万円未満のときであっても、必要経費が55万円まで認められます。
事業所得および雑所得の両方の所得がある場合
実際にかかった経費の合計額が55万円未満のときは、上記と同様、必要経費が合計で55万円まで認められます。この場合には、55万円と実際にかかった経費の合計額との差額を、まず雑所得の実際にかかった経費に加えます。
家内労働者の所得のほか、給与収入がある場合
給与収入があった場合、家内労働者の特例として経費に算入できるのは、「55万円ー給与収入」で計算した金額となります。計算した金額が0以下のときは、特例は適用できません。
例えば給与収入で35万円あるときは、家内労働者の特例として事業所得又は雑所得の必要経費にできるのは、55万円ー35万円=20万円となります。
注意点
特例の対象は「特定の者」への役務提供者
よく例に出るのがピアノ教室です。例えばヤマハ音楽教室など、「ヤマハ」という特定の者への役務提供であればこの特例は認められます。
これに対し、自宅で広く生徒を募集して個人的に行っているピアノ教室の講師などは、「不特定多数」の者への役務提供とされるため適用外となります。
公的年金以外の年金収入(個人年金)との兼ね合い
税務署に勤務していた時に一番多かった誤りがこれでした。
国民年金、厚生年金などの公的年金については、家内労働者の経費の特例計算には影響はありません。
しかし、自身で掛けた生命保険などの年金収入(個人年金)については、掛金の額を必要経費の特例計算から控除する必要があります。
【計算例】
① 公的年金等の収入金額が150万円(年齢は70歳)
② 生命保険契約に基づく年金の収入金額が30万円、必要経費が15万円
③ シルバー人材センターからの収入金額が80万円、必要経費が10万円
③のシルバー人材センターの収入が、家内労働者の特例の対象となります。
①の公的年金等の収入は、特例には影響ありません。
②の個人年金について、必要経費が15万円あります。
このとき、③のシルバー人材センターについての必要経費は、【直接かかった10万円】と、【家内労働者の特例として、55万円から直接かかった10万円と個人年金の必要経費15万円を控除した30万円】の合計40万円となります。
②の個人年金の必要経費が15万円、③のシルバー人材センターの必要経費が10万円+30万円で40万円。
②と③の合計で55万円となります。
青色申告特別控除と併用可能
青色申告特別控除(10万円、55万円、65万円)と併用できます。
青色申告特別控除の要件を満たしていることが大前提となりますが、忘れやすいので注意してください。もったいないですからね。
更正の請求で適用可能
家内労働者の特例を確定申告で適用していなかった、というような場合でも、「更正の請求書」を提出することで遡って適用できます。
ただ、「更正の請求書」には追加・変更になる点の証拠書類を付けること、という規定があるんですが、この場合要るのかな。
「(不特定じゃなく)特定の者に役務提供している」という証拠は必要になるかもしれません。税務署に相談ですね。
まとめ
家内労働者の必要経費の特例についてまとめてみました。
「注意点」については、税務署と納税者で揉めがちになるので、注意してください。
【編集後記】
夜暖房をいれました。加湿器もON。乾燥が気になり始める季節です。