こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

不動産所得(不動産などの貸付けによる所得)には「事業的規模」(事業として行われているかどうか)か「事業的規模でないか」によって、所得金額の計算上の取扱いが異なる場合があります。

事業的規模って何?

「事業的規模」は一言で言えば、不動産などの貸付を大規模で行っていることです。「事業的規模」である方が税金を計算する上では有利です。

その判定は、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって判断します。

しかしこれではかなり曖昧であるため、形式的に次のいずれかの基準を満たせば「事業的規模」として扱っていいことになっています。

【建物】
・貸間、アパート等の独立した室数が、おおむね10室以上であること。
・独立した家屋の貸家数が、おおむね5棟以上。

【土地】
・土地、駐車場の契約件数が、おおむね50件以上
(1室の貸付に相当する土地の契約件数をおおむね5件として判定)

いわゆる「5棟10室基準」と呼ばれるものです。

例えば、貸室8室と貸地15件がある場合、貸室8室+(貸地15件÷5=3)=11室となり、「事業的規模」と判定することが可能です。

「5棟10室基準」を満たさない=事業的規模でない、ということではありません。この場合は最初に立ち戻って「社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうか」により判定します。

事業的規模であるときと事業的規模でないときの違い

主に次のような違いがあります。

資産損失等の取扱い

資産損失、取壊し、除去、滅失等について、不動産の貸付けが事業的規模で行われている場合は、その全額を必要経費に算入します。

事業的規模でない場合は、必要経費に算入される金額は、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額が限度となります。

貸倒損失の取扱い

賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、不動産貸付けが事業として行われている場合は、回収不能となった年分の必要経費に算入します。

不動産の貸付けが事業的規模でない場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直します。

専従者給与等の取扱い

青色申告の青色事業専従者給与や、白色申告の事業専従者控除については、事業的規模で行われている場合のみ適用されます。

事業的規模でない場合は、適用はできません。

青色申告特別控除の取扱い

青色申告特別控除は、事業的規模の場合、一定の要件を満たせば、最高55万円(e-Taxで電子申告を行っていれば最高65万円)の控除を受けることができます。

事業的規模でない場合には、最高10万円の控除となります。

まとめ

「事業的規模」に該当するかどうかで、取り扱いが大きく異なります。

5棟10室基準を満たしていれば問題ありませんが、そうでない場合は税務署から実態の確認を求められたり、調査が入ったりする可能性もあります。

しっかりと確認するよう注意してください。

【編集後記】
ビーフシチューを作りました。妻にも子どもにも好評でした。