
こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
妻が漫画家(「星旅少年」という漫画を連載しています)ということがあり、当事務所では漫画家さんなどのクリエイター応援プランを用意しております。
漫画家さんの収入で多いのは原稿料と印税かと思います。
確定申告や帳簿の付け方での注意点について述べようと思います。
源泉所得税の考え方
漫画家さんは原稿料や印税が出版社などから売上として入金されます。
他にも販促のために描いたポスターやコラボ商品に関する著作権使用料等もあるかと思います。
一定の要件を満たす場合、その売上から源泉所得税が天引きされ入金されます。
これは、出版社が漫画家さんに代わり所得税を天引きして納めるというものです。漫画家さんに代わり売上の中から会社が所得税を払っておきますね、という制度です。
「余計なことはしなくていいよ」とお思いになる方もいるかもしれませんが、これをしないと出版社が税務署から罰則を喰らいます。そのため、漫画家さんの意向は関係ありません。
印税以外については請求書を発行することも多いと思いますが、源泉所得税を記載しようとしまいと、天引きされます。
そのため、請求書の金額と振込額が違うことはよくあります。
源泉所得税の計算方法
源泉所得税の計算式は以下のようになっています。
支払金額が100万円以下の場合 支払金額×10.21%
支払金額が100万円超の場合 (支払金額-100万円)×20.42%+102,100円
支払金額に消費税を含めるかどうかは、どちらでも間違いではありません(原則として消費税込の金額が対象となりますが、支払金額と消費税が明確に区分されている場合は、消費税抜きの金額を源泉徴収の対象として良いとされています)。
取られた金額は確定申告で精算
源泉徴収は所得税の前払いです。金額も概算で引くため、正確ではありません。
源泉徴収は売上に対してされるものであり、確定申告での税金は所得(=利益のこと。売上ー経費で計算します)で計算します。
そのため、確定申告で精算します。
1年間で源泉徴収された金額が30万円で、確定申告で計算した所得税額が20万円とすると、30万円-20万円で10万円が払い過ぎとなるため、10万円還付される、という仕組みです。
天引き額をどうやって管理するか
上記のように、天引き額で確定申告での支払額・還付額が変わるため、その管理は非常に重要です。
帳簿を付ける時、一工夫しましょう。
通常の場合、入金があったときの帳簿は以下のように記帳します。
(普通預金)197,538円(売上)220,000円
(事業主貸)22,462円
売上200,000円に消費税10%が上乗せされた220,000円に対し源泉所得税が計算されています。
(事業主貸)科目に補助科目として(源泉所得税)としておけば、管理は可能です。
取引先が少なければこれで事足りますが、複数社と取引があり、どの社に源泉所得税がいくらかを管理したいときは、いっそ(源泉税)科目を作ってしまうのも一つの手です。
補助項目として出版社名を付ければ、取引先ごとに源泉所得税を管理できます。
最終的に確定申告書(青色申告決算書)には(源泉税)科目はなく、(事業主)勘定で申告するため、全額振替えればOKです。
まとめ
源泉所得税は計算が面倒です。一番の理由は10.21%・20.42%と率が中途半端なことなんですが、取引先によって税込で計算したり税抜きで計算したりと統一されないことも原因です。
できれば、「支払通知」など、売上に対して源泉所得税がいくら引かれているのかがわかる書類をもらいましょう。
その上で、帳簿でわかりやすく管理できると確定申告が楽になると思います。
【編集後記】
確定申告書には取引先ごとに源泉所得税を記載する欄があります。
記載しない=還付されない、ではありませんが、不十分だと税務署から確認の連絡が来ることがあります。