
こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
漫画家さんは原稿料の他に、出版社から本を出していれば印税収入があります。
「印税や著作権収入はいつ売上に計上していつ確定申告をするの?」というのがわかりにくいので、印税や著作権収入の売上計上のタイミングについてまとめてみます。
原則は「発生主義」”収入権利”が確定したとき
漫画家さんに限らずですが、その年の収入=売上とする金額は、「発生主義」と言って年末までに実際にお金を受け取っていなくても「収入の権利が確定した金額」になります。
実際にお金を受とったかどうか、代金を請求したかどうかは関係がありません。
(国税庁HP:「収入金額とその計算」)
例
【納品・請求時】売掛金 100,000/ 売上 100,000
【入金時】 普通預金 89,790/ 売掛金 100,000
源泉所得 10,210
※源泉天引き後入金額を売上額としないように注意しましょう。
原則として作品を納品・原稿料等を請求したタイミングで売上を計上します。
印税はやや特殊
印税は出版社などから発行部数や販売部数に応じて受け取ります。
印税契約の形態は次の2種類があるかと思います。
- 刷り部数契約
発行部数だけ印税が支払われる契約。
たとえ売れなくても刷った部数だけは印税収入が保証される。 - 実売部数契約
販売部数を3ヵ月や6ヵ月など一定期間集計し、実際に売れた分の印税を支払う契約。
刷り部数契約なら話は簡単で、権利が確定したとき、請求書を発行したときなどに収入に計上すればOKです。
しかし実売部数契約の方はそうは行きません。印税は数ヶ月分がまとめて入金されるため、いつ売れた分なのかはわからない。
権利が確定したときっていつ?となるんですが、分配通知書等に「○年〇月締め」という記載があればその日でいいでしょう。
しかしその記載があるかどうかも出版社によりまちまちです。
そこで実務では、出版社からの分配通知書の発行日とするのが合理的とされています。
所得税ではなく消費税ですが、基本通達に以下のものがあります。
消費税基本通達9-1-21
(工業所有権等の使用料を対価とする資産の譲渡等の時期)
工業所有権等又はノウハウを他の者に使用させたことにより支払を受ける使用料の額を対価とする資産の譲渡等の時期は、その額が確定した日とする。ただし、事業者が継続して契約により当該使用料の額の支払を受けることとなっている日としている場合には、これを認める。
税務署ではこの通達により、「ロイヤリティ収入の時期は支払いを受ける日と取扱って差し支えない」としています。
入金がものすごく遅い場合
通知が遅れて届いて確定申告に間に合わなかった、というような場合は、入金日ベースとするしかありません。
やむを得ない措置なので、もし税務調査が入って指摘を受けたら理由をきちんと説明しましょう。
指導すべきなのは調査に入られた方ではなく、通知が遅い相手方だ、と反論しましょう。
まとめ
原則は「収入権利」が確定したときに売上を計上します。
印税の場合、その権利確定の日がわかればその日を、わからなければ通知書の発行日を基準とするのが合理的です。
そして選んだ方法を毎年継続して適用してください。「この年はこっち・次の年はあっち」とすると利益操作と受け取られかねません。
合理的な理由に基づき継続して処理していれば、税務調査において大きな問題となることはないはずです。