
こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
住宅ローンを利用してマイホームを新築・購入した場合は、住宅ローン控除という制度によって大幅に税金を少なくすることができます。
しかしこの住宅ローン控除、用意する書類が大量にあり、住宅の種類によって異なるため、誤った書類が提出されることが非常に多くあります。
そこで、必要な書類についてまとめてみます。
住宅ローン控除
住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)とは、銀行などからお金を借りてマイホームの新築・購入等をし、一定の要件を満たす場合減税を受けることができる、という制度です。
毎年のように制度が改正されるため、適用する年によって年数、控除額に違いが出ますが、令和6年の場合、ざっくり「住宅ローンの年末残高又は建物・土地の値段の低い方」の0.7%の税金が13年間(一部10年間)安くなる、という計算になります。
例えばローン年末残高が2,000万円、建物・土地の価格が3,000万円の場合、低い方の金額である2,000万円×0.7%=14万円ほど税金が安くなります。
なお、控除額には限度があり、住宅の種類によって異なります(環境に良い住宅だったり、子育て世代等だと限度額が高くなります)。
安くなる税金はまず所得税から減額し、引ききれない分は翌年の住民税から減額(97,500円が限度)します。それでも引ききれない分は、残念ながら切捨てされます。
住宅ローン控除を受けるためには初年度に限り確定申告が必要で、最初の確定申告では色々と書類を用意する必要があります。
(2年目以降は、会社員等は年末調整でうけることが可能です)
住宅ローン控除に必要な書類
共通して必要なもの
住宅ローンの年末残高証明書
住宅ローンを借りている銀行等から入手しますが、通常は10~11月頃に自宅に送られてきます。
年末時点で住宅ローンがいくら残っているかを証明するもので、残高証明書については2年目以降に住宅ローン控除を適用するときも必要です。
なお今回から、金融機関が国税庁へローンの残高情報を提出している場合は提出がいらなくなりました(これを「調書方式」というそうです)。
金融機関によってこの「調書方式」が採用されているかどうかが異なるとのことなので、ご自身が借入をしている銀行等に確認してみましょう。
住宅・土地に関する契約書
住宅を購入した場合には売買契約書、注文住宅の場合には工事請負契約書が必要です。
建物にプラスして土地を購入した場合には、土地の売買契約書も必要です。
(土地も住宅ローンで購入した場合)
契約書はオンリーワンの書類のため、税務署にはコピーを提出します。
また、「調書方式」の場合、住宅に関する契約書は提出不要となりました。
※税務署へ行って申告書を作成するときは、金額等の情報が必要なため、提出不要ではありますが契約書は必ず持参してください。
住宅・土地の登記事項証明書
住宅の全部事項証明書が必要ですが、土地も住宅ローンで購入している場合には、土地の全部事項証明書も必要です。
取得日、所有者、床面積等、住宅ローン控除の適用要件を満たしているかの確認のために必要となります。
全部事項証明書は法務局で取得できます。登録すればネットでも取り寄せることができます。
なお、全部事項証明書には不動産番号が付されていて、その番号を住宅ローン控除の計算書に記載すれば全部事項証明書の提出は不要です。
※契約書と同様、税務署へ行って申告書を作成するときは、内容の確認に必要なので必ず持参しましょう。
認定住宅、省エネ住宅の証明
令和6年からは一般の住宅は住宅ローン控除の対象外となり、認定住宅、省エネ基準に適合する住宅のみ住宅ローン控除を適用する、という改正がなされました(一般の住宅も、令和5年12月31日までに建築確認を受けた物または令和6年6月30日までに建築された物も対象)。
認定住宅、省エネ住宅は、状況書類の他にその証明書が必要になります。
住宅の種類 | 必要書類 |
---|---|
認定長期優良住宅 | ・長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し ・住宅用家屋証明書 or 認定長期優良住宅建築証明書 |
低炭素建築物 | ・低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し ・住宅用家屋証明書 or 認定低酸素住宅建築証明書 |
低炭素建築物とみなされる 特定建築物 | 特定建築物用の住宅用家屋証明書 |
ZEH水準省エネ住宅 | 住宅省エネルギー性能証明書 or 建設住宅性能評価書 |
省エネ基準適合住宅 | 住宅省エネルギー性能証明書 or 建設住宅性能評価書 |
※書類の取得先については、まずは建築会社に相談すると良いでしょう
一般住宅
一般の住宅で、令和5年12月31日までに建築確認を受けた物の適用を受ける場合、それがわかる確認済証や検査済証が必要になります。
買取再販住宅の購入、住宅の増改築等
上記に加え、建築士等が発行する「増改築等工事証明書」等が必要になります。
住宅購入の補助金や親からの贈与を受けた場合
親から資金の援助を受けて贈与税の特例を受ける場合や、自治体等から建築、移住に関し補助金をもらった場合には、その金額を証明する書類が必要となります。
誤りの多い書類
制度がわかり辛いのが一番の原因ですが、税務署勤務時代の経験では、住宅ローン控除に関しては書類の提出誤りが非常に多かったです。
以下に誤りの多い事例を紹介しますので、提出の際はご注意いただけると嬉しいです。
○注文住宅の契約書
注文住宅の場合、追加工事や工事の変更などを行うことが一般的です。
追加工事を行い、それが住宅ローン控除の対象となる工事であれば、その契約書も必要になります。また、工事内容の変更があった場合も同様です。
住宅ローン控除の計算明細書に記載された工事金額と、提出された契約書の工事金額が違うことがよくあり、申告者への確認等が必要になります。
○認定長期優良住宅、低炭素建築物
書類が2種類必要ですが、どちらか一方の提出であることが非常に多かったです(どちらかと言うと、「住宅用家屋証明書」が無いことが多い)。
また、「検査済証」など、誤った書類の提出も多くありました。
「認定通知書の写し」と、「住宅用家屋証明書」or「認定長期優良住宅建築証明書」の2種類の書類が必要になります。
○ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅
・基準を満たさない証明書が提出され適用されていることがありました。
ZEH水準省エネ住宅は断熱等性能等級5以上・一次エネルギー消費量等級6以上
省エネ基準適合住宅は断熱等性能等級4以上・一次エネルギー消費量等級4以上
が必要となります。
・「建設」住宅性能評価書が必要ですが、「設計」住宅性能評価書が提出されていることが多かったです。出し直しとなってしまいます。
終わりに
住宅ローン控除の適用には普段あまり目にしない書類が数多く必要で、面倒で時間もかかります。書類収集は早めにやっておきましょう。
また、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」という書類も必要になりますが、確定申告の書類を作成する際に作りますので、用意する必要はありません。
書類誤りや計算誤りが非常に多く、件数も膨大になるため、一たび誤りがあり還付が止まっても税務署から中々連絡は来ません。
提出の際注意いただくのと、あまりに還付が遅ければ税務署へ状況を問い合わせをしてみるのも良いと思います。
【編集後記】
向こう何年も控除を受ける物になります。しっかり申告して、確実に減税を受けましょう!