こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

インボイス発行事業者は、消費税の確定申告が必要です。

開業年からインボイス登録をした場合、1年目から消費税の申告が必要になりますが、開業前に支払った開業費の消費税はどうなるか、というお話です。

開業年のインボイス登録

新たに事業を開始してインボイス登録を受ける場合、事業を開始した課税期間(個人事業者の場合は歴年となるので、原則として12月31日まで)においては、その課税期間(年)中に登録申請書を提出することで、1年の初めから登録を受けることができる特例があります

例えば令和6年の8月に開業し、9月に特例の登録申請をした場合は、令和6年1月1日がインボイスの登録日となります。

一方、特例を使わず、新たにインボイス登録を登録希望日から受けるという方法もあります。
この場合、登録希望日は登録申請書を提出した15日以降の日とする必要があります。

インボイスの登録日以降の取引については消費税の申告が必要となるため、特例を使った場合は1月1日からの、通常の場合は登録日以降の取引について、申告納税が必要になります。

そうは言っても脱サラしたような場合は開業まで給与収入しかないでしょうから、特例であれば実質は開業日以降の取引について申告が必要、ということになります。

開業前に払った開業費

開業までにかかった費用は「開業費」として計上できます。

個人事業主の開業費は法人よりも幅広く、大方の費用を開業費とすることが可能です。

開業費についても当然、消費税を払っています。この消費税、事業に関係しているとはいえまだ事業は行っておりません。この場合に、受取った消費税から控除できる(仕入税額控除)でしょうか。

答えは「支出した年の仕入税額控除とできる」です。

国税庁HPにその記載があります。

消費税通達11-3-4

創立費、開業費又は開発費等の繰延資産に係る課税仕入れ等については、その課税仕入れ等を行った日の属する課税期間において法第30条《仕入れに係る消費税額の控除の規定が適用されるのであるから留意する。

開業したばかりでは売上も少ないことも多く、預かった消費税も少額であることから、経費が大きい場合、消費税の還付を受けることもできます。

消費税の還付を受ける時の注意点

しかし還付申告のためには何点か注意すべきことがあります。

登録日以降の取引が対象となること

原則として、消費税は2年前の課税売上が1,000万円を超えた場合に、申告・納税義務が生じます。

これは還付申告の時も同じで、いくら赤字であっても2年前の課税売上が1,000万円を超えていなければそもそも申告義務がないため、還付申告をすることができません。

しかし、インボイス登録を受けた場合は、登録日以降「課税事業者」となり、登録日以降の取引について、消費税の申告・納税義務が生じます。

開業費の支払について、仕入税額控除とできるのは登録日以降の分になります。

上記の「特例」を使って登録申請を行えば、その年の1月1日からインボイス登録事業者となるため、その年に支払った開業費の消費税は仕入税額控除が可能です。

2割特例は使わないこと

2割特例は、預かった消費税のうち2割を納めればいいですよ、という特例です。

インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方が対象です。
(国税庁:2割特例適用可否フローチャート

この特例で申告すると納税額を下げることができるのですが、還付を受けられる場合でも2割の納付をすることになるため、還付申告をしたい場合は絶対に選択してはいけません。

さらに、2割特例で申告し、確定申告期限を過ぎてから誤りに気付いたとしても、還付申告として出し直すことはできません(申告期限内であれば出し直すことができます)。

注意しましょう。

簡易課税制度を選択しないこと

簡易課税制度は、預かった消費税のうち4割~9割(割合は業種によって異なる)を差引き、残りを納めればいいですよ、という制度です。

中小事業者の事務負担への配慮から設けられている制度で、適用は事業者の選択によることとされています(消費税簡易課税制度選択届出書の提出が必要)。

届出書は適用を受ける年の前年に提出する必要がありますが、事業を開始した年については、年末までに提出すれば事業開始年から適用が可能です。

この簡易課税制度ですが、計算方法としては2割特例と同じです。

そのため、還付を受けられる場合でも何割かの納付をすることになるため、還付申告をしたい場合は絶対に選択してはいけません。

2割特例と異なり届出書を提出し選択していることから、直しようがありません(1度提出すると原則2年は簡易課税を止められません)。

消費税の還付申告はチェックが厳しめ

税務署の視点からすると、消費税の還付申告は不正が横行しやすいため、審査が厳しくなりがちです。

「消費税の還付申告」というだけで一旦還付が保留され、後日改めてゆっくり審査する、ということがよくあります。場合によっては、領収書などの提出を求めます。
還付額が大きいと税務調査をする場合もあります(多いのが太陽光発電などの設備投資によるもの)。

そのため、消費税の還付は振込まで時間がかかることが多いです。

「なかなか還付金が振り込まれないな」ということがあっても、そういうものだと構えていてください。

【編集後記】
ふるさと納税の返礼品が届き始めました。美味しくいただいています。