こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

税金の計算をしているとよく「生計を一にする」や「同一生計」などの言葉が出てきます。

所得税では、「生計が同じかどうか」が判断のポイントになることが多く重要なのですが、「同一生計」は法律上の定義があるわけではなく、実態で判断します。

「同一生計」を基準にした規定は多い

所得控除

所得控除では、人的控除のうち、配偶者控除、扶養控除、障害者控除、ひとり親控除では同一生計親族が要件となります。

また、健康保険や年金などの社会保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、雑損控除について生計を一にする親族の社会保険料、資産、医療費、を対象としています。

その他の控除では、生命保険料について、法令の規定には同一生計の要件がありませんが、国税庁の「確定申告書作成コーナー」などのFAQでは、一定の要件の下、保険料等の支払者が控除できると記載されていますので、同一生計の要件があると考えられます。

他方、ふるさと納税に代表される寄附金控除や、iDeCoなどの小規模企業共済等掛金控除については、支払った本人のみの控除となります。

余談ですが税務署にいたとき、配偶者名義でのふるさと納税の証明書を添付し申告をされた方がいました(配偶者控除があり、配偶者は所得がない)。金額も高額で、当然否認したのですが、本人の財布から出した、との反論。
しかし証拠がしっかりとあるので、寄附先の自治体に掛け合い本人名義の領収書を出してもらえれば認める、と伝えました。

この手の証明書、再発行ならともかく、配偶者とはいえ「違う人名義の領収書」なんて出るわけないと思っていたのですが、9割方の自治体が差替えに応じ、本人名義の領収書を提出してきました。

ちょっとビックリでした。とはいえこれがスタンダードなのか、その時だけの特別対応なのかわかりません。ふるさと納税の領収書、名義にはくれぐれもご注意ください。

事業関係でも規定あり

例えば同一生計の家族へ払った給与、外注費などは、事業に関する経費とはなりません。

給与に関しては、「青色事業専従者」に払う分は経費となりますが、これには同一生計の要件があります。

逆に、生計が違う親族へ払った給与や外注費などは、事業の経費となります。

「同一生計」の判定

税務署での判断は、一次的には確定申告のとおりとし、疑問点等があれば「お尋ね」などの通知を送ったり、「税務調査」により解決します。

そのため、まずは申告する方本人が「生計が同じ」ということを判定する必要があります。

「生計が同じ」とは、簡単に言うと「生活費の財布が同じ」ということで判断します。これには、必ずしも同居であることを必要とはしていません。

例えば一人暮らしをしている子どもや、高齢の親御さんを扶養している方が仕送りをしているようなケースは、「同一生計」となります。単身赴任なども同じことですね。

逆に同居していても、生活の財布が違うと「別生計」と見なされます。

二世帯住宅などで、お互いに独立した状態で生活していることが明らかであるならば、「生計を一にしている」とは判断しません。

上記のとおり、法律上の規定はないんですが、いくつか「基本通達」があります。通達は法律ではなく指針であるため、国税職員を縛るものであり納税者が従う必要があるものではないのですが、税務署の判断の基準となります。

国税通則法基本通達

9 法第46条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる
 なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

所得税基本通達

2-47(生計を一にするの意義)
 法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であつても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
 イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
 ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2)親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

同居が要件ではないことを謳っていますね。

仕送りをしている場合は、生活費や医療費などの送金記録や、現金書留の控えなど生計を一にしているということが分かる書類を残しておきましょう。

まとめ

生計が一がどうかで影響がある規定は多くあります。

所得控除や事業の経費関係など、税額への影響が大きいこともよくありますので、注意してください。

【編集後記】
ドウデュースきた!武豊騎手今年のGI初勝利です。強かった。ジャパンカップと有馬記念も勝って欲しい。