こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

開業費を経費として計上するのは、自分の好きな時でOKです。

開業費は好きな時に経費にできる

「開業費」と聞くと「開業したときに経費になる」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。

開業費は、基本的には5年で均等に経費とするとされている一方、自分の好きなタイミングで経費とすることも認められています(所得税法第50条、所得税法施行令第137条1項1号、第3項)。

基本的には5年間均等に経費とする

開業費は「繰延資産」と言い、いったん資産として計上したあと、決められた期間で、少しずつ、毎年同じ金額を経費にしていきます(これを「均等償却」と言います)。

経費とする期間は決められていて、開業費の場合5年となります。

そのため、基本的には、開業費はいったん繰延資産に計上し、5年で少しずつ、毎年同じ金額を経費にしていきます。

好きな時に経費とすることもOK

しかしながら、開業費には「任意償却」というものが認められています。

これは、支出した金額の範囲内であれば、いつでも経費に計上することができるというもので、開業費は、自分の好きなタイミングで経費として計上することができます。

開業した年に全額経費にしてもいいし、しなくても大丈夫。また、全額でもいいし、少しずつでも大丈夫です。

開業費の仕訳

開業費の仕訳は以下のとおりとなります。

開業費の仕訳

【開業時(開業費の合計50万円)】
開業費 500,000 /元入金 500,000

【開業費50万円のうち、20万円を経費とするとき】
開業費償却 200,000 / 開業費 200,000 ※開業費の残高30万円

経費とするときの日付は、その年の個人事業の決算日(12/31)となります。残高の30万円は、翌年以降、いつでも経費とすることができます。

経費とするのはどの年が良い?

いつでも良いと言われてもいつ経費にしたらいいの?と思いますよね。

これは実は難しいところですが、基本的には「黒字かつ額が大きいとき」が良いと思います。

所得税は、「超過累進税率」と言って、課税所得が大きければ大きいほど税率が高くなる仕組みです。
(参考:国税庁HP「所得税の税率」)

この課税所得は、「所得の合計ー控除の合計」で計算します。

開業費の経費化は、このうち「所得の合計」を減らすものです。

たとえば、「所得の合計<控除の合計」ならば、課税所得は0(赤字の場合は0となります)のため、税金も0となります。この年に開業費を経費としても、ほとんど意味はありません。

逆に所得が思いっきり高い年に経費とすれば、税率が高い分、減税効果も大きくなります。

もちろん、ご自身の置かれている状況にもよると思いますので、一つの参考にしていただければと思います。

注意すべきポイント

対象は不動産所得、事業所得、山林所得

所得税法施行令第7条1項で、開業費を以下のように定めています。

所得税法施行令第7条第1項

開業費:不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。

ここでのポイントは、雑所得は含まれていないということです。

サラリーマンの副業などを雑所得として申告する場合は注意してください。

一度経費とするとやり直しはできない

提出した確定申告書に売上計上漏れや計算誤りなどがあったり、法律の規定に従っていなかったような場合は、修正申告・更正の請求の手続きで直すこととなっています。

しかし開業費を自分の好きなタイミング・金額で経費とすることは、「間違い」ではありませんので、直すことはできません。

開業費を経費とするときは、ご自身の状況等を踏まえ、よく確認してしっかりと決めるようにしましょう。

証拠はしっかり残す

開業費としてふさわしいか、誤りがないかを確認されるのは税務調査のときです。

言い換えると、申告書を提出するときは何もチェックされませんし、証拠書類の添付も必要ありません。

開業費に限ったことではないですが、支出等の証拠はしっかりと保管し、税務調査で説明できるようにしましょう。

まとめ

開業費は自分の好きなタイミング・金額で経費とすることが可能で、うまく使えば効果的に節税できます。

開業時には色々と費用が掛かります。書類の管理や集計をしっかりとやっておきましょう。

【編集後記】
ブリーダーズカップをグリーンチャンネルで観戦。惜しかった。特にターフは・・・。クラシックもマイルも大健闘。どれも勝って欲しかったですけど、良いレースでした。