こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

早いもので、もう生命保険会社から令和6年分の控除証明書に関する案内が来ました。

そろそろ確定申告や年末調整の足音が聞こえてくる時期です。

今日は退職金の確定申告について。

退職金は原則的には申告不要

退職金は多くの場合、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出し、源泉徴収されるため、原則として確定申告をする必要はありません。

源泉徴収税額は退職所得に税率を掛けて計算します。

なお、収入金額より退職所得控除額が大きい場合は、課税される所得が0となりますので、源泉徴収はされません。

退職所得の計算方法

(収入金額-退職所得控除額)×1/2で算出します。

退職所得控除額は以下の計算式で計算します。

勤続
年数
退職所得控除額
20年
以下
40万円×勤続年数
(80万円未満のときは80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

注1:勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算します。

注2:障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額に、100万円を加えた金額となります。

※退職金が「特定役員退職手当等」や「短期退職手当等」に該当する場合は計算方法が異なります。
(国税庁HP:タックスアンサー「退職金を受け取ったとき(退職所得)」

退職金の源泉徴収税額

課税退職所得金額(A)税率(B)控除額(C)
195万円以下5%
195万円超
330万円以下
10%97,500円
330万円超
695万円以下
20%427,500円
695万円超
900万円以下
23%636,000円
900万円超
1,800万円以下
33%1,536,000円
1,800万円超
4,000万円以下
40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円
復興特別所得税があるため、計算は((A)×(B)-(C))×1.021となります。

確定申告が必要になる場合

退職金は上記のとおり、原則として勤務先で源泉徴収することで課税が完結します。

また、確定申告をする上では分離課税となり、給与や年金などの総合課税される所得とは別立てで計算するため、基本的には税額に影響しませんが、影響が出る場合は確定申告が必要になります。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、退職金の額に20.42%の税率を掛けて源泉徴収されます。

これは上記の計算に拠っておらず、概算のため、確定申告で精算をします。

所得控除や損益通算を適用する場合

医療費控除や寄附金控除などの所得控除を適用する場合や、損益通算(事業所得・不動産所得などの赤字と退職所得を相殺すること)をする場合は、確定申告が必要です。

これらはまず給与所得などの総合課税の所得から適用しますが、適用してもまだ余りがある場合は、退職所得にも適用することができます。

「合計所得金額」に要注意!

勤務先で源泉徴収が正しくされ、所得控除や損益通算もないとすると、確定申告の際に退職金を含めない方も多くいらっしゃいます。

しかしこれは要注意です。

所得控除の中には「合計所得金額」によって控除額が減少したり、控除自体受けられないものがあります。

この「合計所得金額」には退職所得も含まれるのです。

これに気づかないで確定申告に退職金を含めず、あとから修正申告の対象となると、加算税や延滞税がかかる場合があります。

全ての人に適用のある「基礎控除」と、配偶者の「配偶者控除・配偶者特別控除」は、特に影響のある人が多く、国税にいたとき、見直しと修正申告の通知を出しました。

他にも、公的年金等の所得額の計算や、扶養される人の所得などにも影響があります。退職所得がある方は、「合計所得金額」の計算には注意してください。

【基礎控除】

納税者本人の
合計所得金額
控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超
2,450万円以下
32万円
2,450万円超
2,500万円以下
16万円
2,500万円超0円

【配偶者控除】

控除を受ける納税者の
合計所得金額
配偶者控除額(老人控除対象配偶者)
900万円以下38万円(48万円)
900万円超
950万円以下
26万円(32万円)
950万円超
1,000万円以下
13万円(16万円)

※老人控除対象配偶者は、配偶者が70歳以上の場合の控除額

※配偶者控除・配偶者特別控除とも、申告をする本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、適用できなくなります。

まとめ

退職金があるときは、とにかく「合計所得金額」に注意してください。

勤務先などから「退職金は税金の精算が済んでいるから申告は不要」と言われても、あくまでそれは「退職金に関する税金」だけの話です。退職金があることで他の控除に影響が出るということは考慮していません。

「あとで税務署に言われたらやればいいや」では、加算税や延滞税など、本来は払わなくていいペナルティがかかることがあり、想像以上に負担が重くなることもあり得ます。

計算や申告に不安な方は、税理士に依頼することも検討してみてください。

当事務所でも確定申告の作成依頼をお受けしております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
(お問い合わせはこちらから)

【編集後記】
2021年に千葉ロッテマリーンズから中日ドラゴンズに移籍した加藤翔平選手が引退。
10年以上前、妻と初めて野球を観に行った試合がルーキーだった彼のデビュー戦で、なんと初打席初球をホームラン。忘れられません。
移籍してからも応援していました。お疲れ様でした。