
こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
医療費控除には、通常の医療費控除の他にセルフメディケーション税制というものがあります。
制度が始まり数年経ち、認知度はあるものの、理解度が低い傾向にあるようです。
セルフメディケーション税制と誤りやすいポイントについて解説します。
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制は、自分や家族の健康に気を遣っている方に、税金面で少し優遇措置を設けて支援しましょう、という制度です。
そのため、適用要件と対象になる支払が、通常の医療費控除とは異なります。
適用要件
健康増進と病気予防のため、「一定の取組」をしている居住者が対象になります。
「一定の取組」は、
- 健康診断、人間ドック
- 定期予防接種、インフルエンザ予防接種
- がん検診などの検診
とされています。
健康診断や予防接種を受けたら対象になる、と考えてOKです。
対象となる支払
通常の医療費控除は「治療」のための病院の費用や薬局での薬代が対象でした。
これに対し、セルフメディケーション税制は「特定一般用医薬品等購入費」が対象とされています。
難しい言葉ですが、多くは薬局で販売されている市販の薬と考えていただいて大丈夫です。
対象となる薬には【セルフメディケーション税制共通認識マーク】なるものが付されています。

また、薬局でのレシートに※や◆の印が付され、対象であることが明記されます。
生計が同じ家族の分を含めてOKです。
計算方法・計算式
セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った「特定一般用医薬品等購入費の合計額」(保険金などで補填される部分を除きます。)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。
通常の医療費控除の最高額からするとだいぶ少ないですが、そもそもの趣旨が「健康に気を遣ってあまり病院に行かない人」への支援のためなので、そこまで薬代等が大きくなる人もいないということなのでしょう。
申告方法
「セルフメディケーション税制の明細書」を確定申告書に添付の上、医療費控除として提出します。
医薬品の領収書は提出の必要はありません。また、令和3年分以降の確定申告については、「一定の取組」の書類も提出する必要はありません。
ただし、それぞれ5年間、保管する必要があります(税務署から提出を求められたら提出してください)。
「一定の取組」の書類とは、予防接種の領収書、健康診断の結果通知書等が該当します。
注意点と誤りやすいポイント
通常の医療費控除との選択制
医薬品は、通常の医療費控除の対象にもなります。そのため、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制と両方受けらるのか?という質問を受けたことがあります。
残念ながら、セルフメディケーション税制は、通常の医療費控除との選択制となり、併用はできません。
どちらが有利か、計算して選ぶ必要があります。
また、選択制であることで、確定申告を終えた後の選択替えができません。
修正申告や更正の請求で、通常の医療費控除⇔セルフメディケーション税制の選択替えはできないので注意しましょう。
なお、確定申告期限内でのやり直し(訂正申告、と言います)であれば、選択替えば可能です。
「一定の取組」の費用は対象外
健診や予防接種にかかる支払は、セルフメディケーション税制の対象ではありません。
対象となる費用は、「特定一般用医薬品等」の購入費用に限られます。
家族は「一定の取組」が不要です
生計が同じ家族が購入した医薬品を含ることができますが、その家族の方は「一定の取組」をする必要はありません。
ご家族は健診や予防接種を受けていなくても、セルフメディケーション税制の対象としてOKです。
まとめ
「医療費全体では足切額(10万円の方が多い)までいってないけど、薬局で買った薬が5万円分ある」といったようなケースであれば、セルフメディケーション税制の利用が可能です。
また、医療費が足切額ギリギリを超え、そのうち医薬品の購入額が多いような場合は、セルフメディケーション税制の方が有利となるケースが多いです。
適用できるかどうか、どちらが有利かを確認し、損をしないように申告してください。
【編集後記】
この制度、健康意識を高めて病気予防を促進し、医療費の削減を図ることが目的でしょう。その目的からするとあまりうまくいっていない気がします(利用者はここ数年横ばいのようです)。