
こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。
先のブログで妻の「星旅少年」が日本漫画家協会賞大賞を受賞したことを報告いたしました。
で、この大賞なんですが、50万円ほど賞金をいただけるようです。
この賞金、課税関係はどうなるんだろう、と気になります。
所得税
所得区分は事業所得?一時所得?
賞金の所得区分は事業所得か一時所得になると考えられます。
個人事業として仕事をして得た対価は当然、事業所得になります。国税庁HPでは「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」と記載されています。
対して一時所得は、同じく国税庁HPで「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」とされています。
これ、賞金はどちらにも当てはまると思いませんか?
事業から生ずる所得と言えばそうですし、労務や役務の対価としての性質を有していないようにも考えられます。
ポイントは「応募しているのかどうか」
国税庁HPに興味深い記事があります。
→「吉川英治文学新人賞の受賞に伴って受領した副賞の取扱いについて」
これはとある作家さんが文学賞受賞に伴う賞金を受領した場合の課税関係について、国税庁に問い合わせたものです。
主張のポイントは以下のとおり。
主張のポイント
- 賞金は財団法人吉川英治国民文化振興会が支払うもので、著作に係る対価を支払う出版社からのものではないこと
- この賞は既存の作品の中から選考委員によって選ばれたもので、作家が作品を応募するといった働きかけにより受け取ったものではないこと
- 今回の賞金が源泉徴収されていないのは、所得税基本通達204-6にある原稿の報酬に類似するものの源泉徴収の対象外として掲げられている直木賞、芥川賞、野間賞、菊池賞等としての賞金品と同様のものであること
これにより賞金は「一時所得である」という主張です。
そして国税庁はこの主張を全面的に認めています(回答はこちら)。
ポイントは2つ目、ご自身の働きかけがあったかどうか、という部分かなと考えられます。
1つ目と3つ目はまぁ賞金を貰うっていう事でしたらどの場面でもそうだろうと思いますし、事業所得か一時所得かの論点にはあまり関係ありません。
一時所得であれば特別控除が50万円認められ、さらに1/2にできます。
計算式は((賞金等の金額-必要経費)-50万円)×1/2=一時所得の金額
そりゃできるなら一時所得にしたいですよね。賞金に経費なんてかからないし事業所得なら丸々課税されます。
今回の妻が受賞した協会賞は・・・応募式です。応募したのは出版社ですけどね。
はい、ということで事業所得です。うーん・・。まぁどうしようもできません。
ちなみに、漫画家業を営んでいない方(例えば会社員の方が仕事の傍らに執筆して応募した場合等)が賞金を受け取った場合は、一時所得となります。
消費税
消費税が課税されるのかどうか
所得税以上にわかりづらいのが消費税です。
一般的な消費税の課税対象は次の要件を満たすものになります。
課税の対象の4要件
①国内において行うものであること
②事業者が事業として行うものであること
③対価を得て行うものであること
④資産の譲渡・貸付、役務の提供であること
賞金はこれを満たすのでしょうか。
ポイントは役務の提供と対価
先ほどの吉川英治文学賞の照会にて、消費税も同様に国税庁に見解を問うています。
主張のポイント
- 「対価を得て」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けること
- 賞金等が消費税の課税対象かどうかは、それが役務の提供の反対給付であるか否かにより判定されるもので、消費税法基本通達5-5-8は、「個々に判定する」としている。
- 本件文学賞は、国内において既に発表(出版)されている作品を対象として主催者が一方的に選考し、表彰するもののため、何らかの役務の提供を行った若しくは行う結果として給付されるものではない
以上から消費税は不課税と主張し、やはり国税庁はこれを全面的に認めています。
ポイントは賞金が役務の提供に対する対価であるかどうか。つまり本人が何らかの役務を提供しているかどうかにあると言えそうです。
消費税基本通達5-5-8
消費税基本通達5-5-8では以下のように定めています。
消費税基本通達5-5-8
他の者から賞金又は賞品の給付を受けた場合において、その賞金等が資産の譲渡等の対価に該当するかどうかは、当該賞金等の給付と当該賞金等の対象となる役務の提供との間の関連性の程度により個々に判定するのであるが、例えば、次のいずれの要件をも満たす場合の賞金等は、資産の譲渡等の対価に該当する。
①受賞者が、その受賞に係る役務の提供を業とする者であること。
②賞金等の給付が予定されている催物等に参加し、その結果として賞金等の給付を受けるものであること。
これを読むと、受賞者が事業に関連する作品(①)を賞金等の給付が予定されているコンクール等に応募(②)した場合、受け取る賞金は消費税の課税対象になる、ということになります。
やっぱりポイントは「応募する」という点にありそうです。
まとめ
ということで、妻が受け取った賞金は事業所得で消費税の課税対象です。
所得税・住民税・消費税、さらには市町村国保まで、自分(出版社も含めて)が応募して受賞した場合は一番負担が重い形で課税される、ということになります。
【編集後記】
そうは言っても受賞はとても嬉しいです。