こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

税務調査の現場では「書類が残っていなくて・・」というケースがよくあります。

その場合調査官は「じゃあ調査はできないですね」と終わりにする、なんてことはもちろんできません。

収入はできる限り正確な数字を模索する

まず収入(売上)について。多くの場合、納税者本人が発行した請求書や取引先からの支払通知、伝票、レジの記録などから確認することになります。

ですがそういった書類がほとんど残っていない場合はどうするか。

銀行口座を調べたり、取引先に反面調査をしたりして金額を把握します。

「口座はどこを使っていますか?」「取引先はどこですか?」と聞かれることになりますが、ここで本当は5つあるところを1つ2つしか言わない等、嘘をつくのはあまり得策ではありません。

調査官は色々な情報を掴んでいますし、掴んだ上で調査に来ることもあります。嘘はほぼ間違いなくバレます。その先に待っているのは重加算税。脱税認定され、通常より重いペナルティが課される可能性が高まります。

経費は推計することが多い

収入(売上)は消費税の納税義務判定などにも影響し、税額計算の肝になる部分で納税者も気にするため可能な限り正確に算出するようにしますが、経費は中々そうはいきません。

現金で払っていてレシートが残っていない、クレカ支払にしても明細が細かすぎて覚えていない等、計算は困難です。

そんな時は調査官は「推計」というワザを使います。

例えば周辺地域の同業者の経費率を見るですとか、調査対象年ではない本年分のこれまでの状況を確認する等して、大体の経費の金額を「推計」して算出します。

最後は調査対象者本人に「これくらいじゃないでしょうか?」と数字を示し、納得いただければ修正申告を勧奨する、という流れです。

ここはあくまで交渉の場面なので、納得できなければその旨を伝えましょう。ただ「納得できない・ふざうけるな!」と言うだけではダメでしょう。元々書類を残していないからこうなっている訳ですので。根拠を持って反論するようにしましょう。

消費税に注意

これまで述べてきたのは所得税についてのお話です。所得税は「推計」というものができるので、書類が残っていなくても何とかなります。

消費税はそうとは限りません。消費税の計算は、受取った消費税額から経費と共に払った消費税額を控除して納税額を算出しますが、払った消費税を控除するためには原則帳簿の記載と書類(インボイス)が必要です(簡易課税やインボイス2割特例を適用する場合は不要です)。

所得税のように「推計」で控除する消費税額を計算することはできません。

税務調査は過去3年~5年分行います。1年50万円の追徴としてもトータル150万円~250万円と高額になりがちです。

終わりに

という訳で、書類が残っていなくても所得税はまぁなんとかなります(ただし、正しい金額より不利になる場合が多いです)。

ですが簡易課税やインボイス2割特例を適用しない場合の消費税は負担が大きくなりがちです。

書類の保存バサッと袋にいれておくだけでもOKです。プラス、面倒だと思いますが帳簿作成はコツコツとやっておくことをお勧めしています。