こんにちは!千葉のフリーランス・個人事業主専門の税理士、福地です。

妻が漫画家(「星旅少年」という漫画を連載しています)ということがあり、当事務所では漫画家さんなどのクリエイター応援プランを用意しております。

漫画家などの作家さんの方の確定申告については、いくつか注意するポイントがあります。

まずは売上について確認します。確定申告をするときの参考にしていただければ嬉しいです。

売上は源泉所得税差引き前

印税や原稿料などの売上に対し、源泉所得税が引かれていことがあると思います。

源泉所得税は、報酬の支払者(出版社など)が報酬から一定の金額を所得税として天引きし、本人の代わりに税務署に納める制度です。

例えば、原稿料や印税が100,000円で、振り込まれた金額が89,790円だったとします。この場合、差額の10,210円が「源泉所得税」で、出版社が本人に代わって税務署に納めているという仕組みです。

源泉所得税がいくらになるか、というのは税率が決まっており、100万円以下は10.21%、100万円を超える部分が20.42%となっています。
(例:報酬が110万円の場合、100万円×10.21%+10万円×20.42%=122,520円)

売上は、源泉所得税を引く前の金額で計上する必要がありますのでご注意ください。
上記の例であれば、振り込まれた89,790円でなく、100,000円を売上とするのが正解です。

帳簿・会計ソフトへの仕訳・入力は、以下のとおりとなります。
(現金預金)89,790 (売上)100,000
(仮払税金)10,210
「(仮払税金)」は「(事業主貸)」などでもOKですが、(事業主貸)は色々なプライベートな支払の場面などで使うので、源泉所得税は(仮払税金)とした方があとで集計しやすいかと思います。

売上の計上時期に注意

基本的には発生主義

売上の計上時期には注意です。例えば原稿料。8月分の原稿料を8/20に納品。9/10に入金があった場合、売上は8月分・9月分のどちらになるでしょうか。

基本的には、仕事を納品した日が売上日、つまり計上のタイミングになりますこれを「発生主義」と言っています。

9/10の入金日を売上日、計上のタイミングとすることを「現金主義」と呼びますが、この「現金主義」の適用には事前の申請が必要など要件があります。

年の途中での計上時期のズレは年間の売上額に違いはありませんが、年末年始のズレは影響が出てきてしまうことから税務調査でもよく指摘されるので、特に注意が必要です。

出版社等からの明細をよく確認しよう

印税の売上計上時期は結構迷うところですね。

出版社等から明細が届き、「〇月締め」となっているときは、その月が発行部数の確定されたとき、つまり発生したときになるので、〇月の売上として良いかと思います。

明細も出ず入金が確定した時期がわからない、などとなれば、もう入金日を売上計上時期とするしかありません。こちらではどうしようもできないですので。

もし税務調査があり調査官から聞かれた場合は、「明細が出ない」「いつ売上が確定したかわからず、どうしようもできないので入金日とした」旨をしっかりと説明しましょう。

支払調書を当てにしない

確定申告の時期になると、出版社等から「支払調書」が届くと思います。

この「支払調書」を基に確定申告書を作られている方も多いと思いますが、注意が必要です。

「支払調書」は、上記の「現金主義」で集計した金額が記載されています。つまり、1月から12月までに実際に支払った金額を基に作成されているのです。
「支払調書」の金額をそのまま確定申告書に写す方法では誤ることがありますので、ご注意ください。

話が逸れますが、支払調書は本来、税務署に提出するもので、出版社が漫画家さんに渡す義務は実はありません。そのため、出版社などによっては、支払調書を出していないこともあります。

当然のことながら、支払調書がない=申告しなくていい、ではありませんので、受け取った金額はしっかりと申告する必要があります。

まとめ

売上は総額で、基本的には「仕事を納品した日」で計上します。支払調書に頼りすぎないように注意です。

印税の明細が出ない場合などは、こちらではどうしようもないので、ルールを決めて継続してその方法で経理しましょう。